立禅効果とエビデンス

立禅の脳波および気分状態への作用

○ 加藤洋一(1) 南 俊夫(1) 橋本政和(2) 渡辺剛久(3) 亀井 勉(4)

(1)一般社団法人 立禅普及協会 (2)NPO法人 日本健康事業促進協会 
(3)株式会社 デジヴォ (4)一般社団法人 健康促進・未病改善医学会

1.目  的

 「立禅」とは、読んで字の如く「立って行う『禅』」である。一般社団法人 立禅普及協会が普及・啓蒙を目指している禅の流派は、正式名称を「少林寺内勁一指禅」と言う。中国福建省「南少林寺」に古くから伝わる、中国で最も体系的に作られた医療気功とされる。

 起源は、達磨大師がインドから中国に、仏教と同時に、インド伝統医学に基づく「ヨガ」を伝授した時に遡る。以降、インドで発展した健康法であるヨガを、中国の気候風土に適した内容に作り変え、発展を続けて来た。

 一指禅の効果については中国で、世界医学気功学術会議1などにおいて、一指禅功点穴療法と漢方を併用した症例研究が数多く発表されている。日本でも帯津三敬塾クリニック2ではホリスティック医学として、医師、看護師などにより「がん予防」「脳の活性化」「血流改善」「代謝改善」など「個別・部位別疾患の予防や、治癒が早まるなどの効能効果」を目的として、楊名時太極拳、智能功、時空、外丹功などの指導がされている。然して一般的に指導されている気功、立禅などにおいては、単に技法の継承と、それにより風聞的に言われている効果、効能を標榜しているのであって、其々の指導者が自流の効果を立証しておらず、薬機法に抵触して指導している場合が多々見受けられる。

 少林寺内頸一指禅には様々な練功方法があるが、大きく「立禅」、「座禅」、「動禅」と三つに分類することができる。日本では禅寺で行われる「座禅」が一般的であるが、当会で修練する練功方法の70%は立って行う「立禅」である。その特徴は、初心者にも動作が判りやすく、且つまたいつでも何処でも手軽にできる練功だという点にある。そしてその効能として、自律神経を整えると言われている。

 立禅によって現代人が抱えるあらゆる病気の元になっている自律神経の失調を整える為、そして立禅を誰にでも手軽に取り組んで頂けるように普及させる為に、その効能の実証は非常に重要である。

 今回の立禅の効果を計る測定会においては、これ迄、伝承的あるいは経験的に「精神(心)が安定する」「リラックスしてストレスが解消される」「注意力、集中力が増す」「健康になる」「免疫力が高まる」と言われて来た立禅の効果を、「自律神経系に作用する」事による結果がその一端ではないかと推し、脳波と精神面においての効能を評価する事から、そのエビデンスを実証することを目的とした。

2.方  法

 今回の「立禅」のパフォーマンスでは、少林寺内勁一指禅の站たんとう椿功を10 分間行い、その前後での気分変化と脳波変化を測定した。

 2-1 気分調査

 気分調査票「MOOD」は、「気分の変化を十分に弁別する力を持ち、高い臨床的妥当性をもって」3おり「心理測定学的な検討の結果、高い信頼性と妥当性をもつ」4とされる。

 2-2 脳波測定

 ブレインプロ FM-939(フューテックエレクトロニクス株式会社 製)は、前頭部にセンサーを装着して観察する、非侵襲の測定装置である。

 2-3 状  況

 ■ パフォーマンス中は、部屋の照明を調整して薄暗くしたが、目を開けている。

 ■ パフォーマンス中の脳波も記録するので、脳波センサーベルトを前頭部に装着したままにしている。

 ■ 両腕を上げ続ける為、慣れないと肩に疲労がおきる。

 ■ 両膝を曲げ続ける為、慣れないと下肢に疲労がおきる。

 ■ 秋葉原の雑居ビルの一室を借りて測定会場にした為、パフォーマンス中に外部からサイレンが聞こえたり、選挙期間中(令和元年 夏 参議院議員選挙)であったことから選挙カーの拡声器の声が聞こえて来た時がある。

 これらによりβ波が優位になり、α波が抑制される可能性があった。

3.結  果

 ● 気分調査票「MOOD」の結果

 気分調査票「MOOD」の結果から、10 分ほどの立禅の体勢は肉

体的疲労を誘引する事はなく、未経験者から長期経験者に至るまで、

全てに精神疲労の軽減感や爽快感を感じている。

 ● 脳波測定の結果

 脳波測定においては、α波に見てとれる。しかし通常、低周波数帯域のα波は、リラクセーション反応として見られる事が多いのであるが、修練後には、瞑想状態で出現することがあるそうした低周波数帯域のα波が大きくなるのではなく、1 〜2Hz 高周波数のα波が大きくなる被験者が多い。その影響からであろうが被験者からも、「修練後は(リラックスするというよりも)スッキリとした爽快感がある」と云う感想が多かった。

 ● 全体のまとめ

 ■ 経験者においては、ストレスに対するコントロールが生活習慣の中で自然のうちに安定してできている状態にあると考えられ、それ故にMOOD における変化率は少なく、脳波もα波よりもθ波の方に変化が見られたものと思われる。そして、経験が長くなる程、θ波が賦活化し、β波が抑制されている。所謂「平びょうじょうしん常心」にコントロールされている。

 ■ 過去経験者においては、MOOD の変化率が激しい事、脳波もα波よりもθ波に変化が見て取れる事から、普段のストレスのコントロールはあまりされておらず不安定であると考えられるが、立禅による反応はしっかりと為されている。

 ■ 初心者においては、MOOD の変化率は激しいが、脳波において数Hz でピーク形成しているが、その振幅値は安定的な山形になっていない。普段のストレス・コントロールは殆どされておらず不安定であると考えられるが、立禅の修練によって、通常時よりはリラックスできていることを示唆していると思われる。

 ■ 未経験者においては、初心者同様に脳波では数Hz のピーク形成がされており、また安定的な山形になっていない。立禅後にMOOD で変化が見られるが、脳波の出力(μV)が低下している事から、ストレスに対するコントロールは自然にはできておらずやや不安定と考えられるが、脳の活動(緊張)が緩和されている。つまり立禅の修練により、通常時よりはリラックスできていることを示唆していると思われる。

 以上から、立禅を継続あるいは定期的もしくは常に行う事で、普段からストレス・コントロールなり緊張のコントロールが容易になっていくし、その結果、ストレスに対する耐性も強くなると考えられる。

長期経験者ほど、その傾向が強くなる。また修練後に非爽快感や不安感の感覚が低下するのは、修練後は1 〜2Hz 高周波数のα波が大きくなる傾向、あるいはθ波の賦活化が起こる傾向が見られる事から理解できる。さらに、被験者のα波、θ波の発生レベルとMOODへの回答の結果は一致していた。

 全般的な印象としては、経験の有無、また開眼か閉眼かに関わらず、立禅の修練は自律神経系のバランス調整を含め、ストレス・コントロールや脳疲労の回復に寄与すると思われる。然して修練の継続は、その内容を濃くして行く、つまりその効能を高めていくと考えられる。それは、修練時間の長短ではなく、例え一日の修練時間が短くとも、継続年月、期間の長短に関わるものだと思われる。

3 心身医学・1994 年12 月・第34 巻 第8 号・p.634

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